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2つのサプライズ
ここ最近、我が家の近所から富士山の姿を見ることができる。
父の見舞いに行くたび、私は富士山の姿を探し、見つかったら心の中でそこに向かって一礼する。
「父が、一日でも長く生き延びることができますように」との願いをこめて。
病院にいく前、父のために電気カミソリを買ってあげた。
安全カミソリは手元にあるのだが、認知症が進んでいるために、下手をすると皮膚まで切ってしまう恐れがあるので、危なっかしくてしょうがない。乏しいたくわえをどうにかやりくりして、電気かみそりを買ったのである。
病院に着くと、個室にいるはずの父がいない。
どこに消えた?
容態が急変したか?
携帯が鳴っていないから、父は無事のはずだ。
落ち着け。
あちこち病室内を探したら、父の名前がみつかった。
そこで、私は新た事実を知ることになる。
父の病室が個室から、もといた4人部屋に移動になったこと。
もうひとつ。
病室の入り口にあるネームプレートには、患者の容態を色で表示している。
年末年始、父の容態は「赤」だった。
ところが今日Iいってみたら、父の名前は「黄」になっていた。
断っておくが、われわれ家族は、主治医から「来年の正月はない」と宣告されている。
ところが、父だけは「自分は絶対に治る」と信じているふしがある。
父の強烈な意思が、病魔に対して一時的に優位に立ったということなのだろうか。
「ご苦労さん」。
父が私を見るたびに、最初に言うせりふ。
私は、買ってきた電気かみそりの使い方を説明するが、認知症が進んでいる父はよく理解できない。とりあえず「ここがスイッチだよ」と教えておくが、果たして使い方が理解できているかどうかはなはだ疑問。
以前から「床屋に行きたい」というので、その費用を渡そうと、物置の中にあるポシェットに入れようとすると、父は枕もとのティッシュ箱の中に入れろといって聞かない。私が「明日になって『お金がない』って騒いでも知らないよ」というと、父は「いいんだよー」とのんきな返事。
大丈夫かなあ…
また悪魔たちのネタにならなければいいけどなあ…。
でもうれしい
父がここまで回復してくれて。
これは、富士山がくれた2つのお年玉だ。
富士山、どうもありがとう。
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