![]() |
トップページ > スポンサー広告> 戯言 > 父の一周忌 | |||
スポンサーサイト
新しい記事を書く事で広告が消せます。
父の一周忌
父の命日である昨日、墓参りに行ってきた。
父の眠る墓地は、「東北地方随一」といわれる北の地にある。
大げさに書いてみたけど、交通網の進歩というのは恐ろしい。
私が小さい頃には、父の実家に行くには特急で4時間かかったが、今は新幹線で1時間半ほどしかかからない。だが目的地に早く着くようになった分、旅情というのがなくなったとまではいわないまでも、度の雰囲気を味わうことができなくなってしまった。
当時の特急列車は「エル特急」という名で1時間おきに運行されており、各列車には食堂車が連結され、私も食堂車の名物メニューを味わうのを大変楽しみにしていた。だが新幹線の開通で食堂車つきの「エル特急」は廃止された。このことを残念に思う鉄ちゃん(鉄道ファンのこと。最近急増中の女性鉄道ファンは「鉄子さん」という)も多いだろう。
私が最初にそこを訪れたのは、9歳の時である。
その時は,駅前を「チンチン電車」と呼ばれる市電が、所狭しと走っていた。ところがそれから半年も経たないうちに、市内電車は全路線が廃止になってしまったので、子供心にがっかりした記憶がある。
私が大きくなるにつれ、この地に住む親戚とは次第に疎遠になっていった。
大人になってからかの地を訪れたのは、祖母と叔父が旅立った時だけである。
「雪が積もって大変だよー」と。
父が生まれ育ったその街は、合併を繰り返した結果、最も北寄りの地は他県と県境を接するようになった。そこは冬になると雪が深くなるので、移動が大変になるのだそうだ。
新幹線に乗って父の眠る墓地に向かったのは、昨日の午前中である。栃木県と福島県の県境を越えると、雪が舞っていた。寒かったらどうしようと心配になる。貧血という宿痾があり、人一倍寒がりの私にとって、寒さは最大の敵だからだ。墓地に積もっている雪が深かったらどうしよう?その不安がふと頭の中をよぎる。
だが現地に到着して、私が思っていたことは杞憂に過ぎなかったことがわかった。
列車から降り、駅ビルにある行きつけのラーメン屋で食事を済ませて外に出ると、雪は降り止み、厚い雲の間からは晴れ間が顔を覗かせていた。駅近くのスーパーで必要なものを買いそろえ、いよいよ墓地に向かって出発する。
さらに驚くべきことに、墓地には雪が積もっていなかった。それどころか空は青く澄み渡っていた。
父の眠る区画は、急な坂を登り切ったところにある。そこに着く頃には気温も上がり、身体がうっすらと汗ばんでいるように感じた。
お彼岸で訪問した時以来の、待ちに待った父との対面。だが一番肝心なものを忘れていたことに気がついた…お線香と、火をつける道具をロッカーの中に置きっぱなしにしてきたのだ。気を取り直して、花差しに水をやろうと水くみ場にいったら、そこには
「水道管破裂防止のため、お水は事務所にあるペットボトルをご利用ください」
という表示が…。どうしようかと思って父のいるところに戻り、ふと花差しを見ると、水差しには水がたまっているではないか!持参した花束を花差しにいれ、酒とお供物を墓に並べ、父のために一人冥福を祈った。本来は母も一緒に来る予定だったのだが、直前に座骨神経痛を患い、今回は大事をとってもらったのだ。
一周忌ということで、本来ならお坊さんを呼んで読経を唱えてもらうのだが、交通費の捻出すらままならないワーキングプアの私にとって、それはできない相談である。私は父の墓前で、そのことを真っ先にわびた。
「こんなバカな息子でごめんなさい」と……。
気のせいか、思ったよりも空気が暖かかったように感じた。
だが私が行った時間帯は、私の他にお墓参りしている人はいなかった。私がこの日に行ったのは、父の命日だったからだが、2月に一周期を迎える人の遺族の方は、お彼岸に墓参りをするのだろうか?
墓参りを済ませた後、駅前の大型書店でぶらぶら時間を潰し、そのあと喫茶店でコーヒーを飲む。味はよかったのだが、店主の横柄な態度に失望。あの喫茶店は、もう二度と足を運ばないぞ!
とにかく、一周忌は無事に済んだ。
読者の皆様、これからもどうぞ拙ブログをよろしく。